「…首の飾り、きれいだね」
「オウ?欲しいんか」
「…うん」
「娘っ子はキラキラした物が好きじゃからの」
からからと笑いながら水色のスカルプチャの飾りを外し
あたしの頭を一撫でしてから、首に飾る。
「ちゃんの目の色によう似とる」と白い歯を見せ
再び木陰の散歩道を歩き出した。
その後ろ姿をじれったい気持ちで見つめる。
ある言葉を伝えたいのだけど
気恥かしさや、色んな感情がじゃまして
どうも喉の奥で絡み詰まってしまう。
「モ…モーゼス、くん!」
次こそはと思い、力いっぱい名前を呼ぶけれど
振り返った彼と目が合うと頭の横の方が熱くなり
考えていた言葉が沸騰して、蒸発して
頭の中から消えてしまった。
「何じゃ?」
「え、えっと…、あぁー」
「ちゃん壊れたオモチャみたな動きしとる」
「その槍かっこいい…!」
何か失礼な事を言われた気がしたけど、それ処ではなく、
両手に拳を握りながら思いつきの言葉吐き出す。
そんなあたしの姿を彼はキョトンと見つめた。
「これも欲しいんか?」
「うん…」
「しゃあないのう」
「アーツ系を目指すんか?」彼はそう言いながら
背負っていた武器を下ろす。
「あれ、モーゼスくん、何しているの」
「欲しいんじゃろ?」
「でも武器だよ。自分の身、自分で守れなくなるよ…?」
欲しいと言った物をくれるのに、持っていろと言う。
自分でも何を言っているのか良く分からない。
彼も何を言っているのか良く分からない、そんな顔をした。
そのまま、あたしもモーゼスくんも動かなくなり
穏やかで静かな時間と鳥の歌だけが流れる。
「ワイは…」と彼が口を開くと一緒に
少し冷たい風があたしの髪を踊らせる。
「ワイは、ちゃんが欲しい物は何でもやりたい」
「それで喜んでもらえたら、それがワイの幸せなんじゃ」
出会ってから、一番柔らかい笑顔。
「何でも?」
「オウ!」
そんな顔を向けられたら素直になるしかないじゃない。
決意を固め背の高い彼をいっぱいに見上げる。
変わらない笑顔に愛しさを覚え、唇が震えた。
言葉がぶれないようにお腹に力を入れて
倒れないように足をしっかり土に立たせて。
「あたし、シャンドルの名前が、欲しい」
長い時間心に温め続けた言葉を、やっと渡せた。
「君への気持ち 〜espressoan」
言葉に照れて伏せていた顔を恐る恐る上げると
モーゼスくんにさっきまでの笑顔は無く
ポカンとしていたので、あたしもポカンとしてしまった。
「名前っちゅうと、紙に書いて渡せば良いんか?」
この後、しばらくの間の後に
モーゼスくんの頬に(なんとも情けない力で)ビンタして
混乱している彼を背に走って逃げた。
ビンタも、走って逃げる事も、
わたしなりのプロポーズも
全部が今日初めてで、何だか頭がパンクしそう。
「モーゼスくんの、ばーか」
2010/11/10
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